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”Eastern & Oriental Hotel's carpet replica”
17.0cm×35.0cm Color pencil, straw paper, strings 2011
available
”イースタン・アンド・オリエンタルホテルの絨毯”
17.0cm×35.0cm 藁半紙、色鉛筆、糸 2011
この小さな赤い絨毯は、2011年にマレーシアで見た絨毯を“作った”ものである。 当時、父がマレーシア半島の北西部に位置するペナン島に住んでおり、私がはじめて海外旅行で訪れたのがここだった。滞在期間中は殆んど父の家に泊まっていたが、父が一泊くらいはホテルに泊まってみたらいいと、ペナン島南西部のジョージタウンにあるイースタン・アンド・オリエンタルホテルに部屋をとってくれた。受付を済ませ、ベルボーイに連れられて部屋に入ると、昼下がりの陽光が溢れる窓辺の、木机の下に置かれた絨毯が目に飛び込んできた。表情豊かな深い緋色、短く刈り揃えられた毛足の感触は、いまでもよく覚えている。絨毯のあったところだけ、ブラックホールか宇宙のように異世界めいた輝きを放っていた。一目見て、それが欲しくてたまらなくなったが、ホテルの備品を持ち帰るわけにもいかない。ならば小さな複製を作ろうとすぐに思い立ち、掃除の行き届いた気持ちよさそうなベッドを尻目に、その日は眠らずに手を動かした。赤い絨毯の虜になった私は、本物を前に、できる限り正確にそれを再現した。 あの時、どうして写真に撮るだけでは満足できなかったのだろうか。写真は色鉛筆よりも、ある意味で正確に対象を記録することが出来るかもしれないが、絨毯を織る行為や、直に絨毯に触った時の触覚を再現したとは言い難い。リアリティは、視覚的イメージ以前の行為を再現(あるいは追体験)することで真価を増す。私が手に入れたかったのはこの絨毯であり、絨毯の記録ではない。私は色鉛筆の線という糸を織りながら、この絨毯をもう一度“作った”のだ。
ボテルの部屋に敷かれていた絨毯
イースタン・アンド・オリエンタルホテル、ペナン島、マレーシアにて撮影 2011
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