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風が吹く、海が揺れる、波が立つ / Skyquake

HARMAS GALLERY

2022.5.14 - 6.18

2022.5.14 - 6.18

一月、西伊豆を訪れた。山間を抜けて海沿いの崖道に出た時、不意に視界に富士山が立ち上がった。冬ざれの湾に浮いているかのような淡色の山体をじっくりと眺めたくなり、路肩に車を止めて扉を開けたその瞬間、潮風が塊となってぶつかってきた。背後の崖に逃げ場を阻まれ、狭い道でぐるぐる渦巻く大風は立っていられないほどで、髪はほどけ前が見えず、体ごと巻き上げられて崖下に投げ出されてしまうのではないかと───恐怖に足が竦んだ。遠雷のような海鳴り。車の向かいから母が何か叫んでいる。風の中、かすかに声が聞こえた。

冬の西伊豆は風が強い。海沿いに生まれ育ったわたしは夕暮れ時の海風を知っていたが、これほど強く荒んだ海風を経験したことはない。荒れる海に白波がループする風景が、目の深いところに焼き付いて離れなかった。

風が吹き、海が揺れ、波が立つ。変換と再構築の過程で生じる摩擦は、いびつさや揺らぎといった手触りをもたらす。反復、複製、変容。西伊豆で見た白波のループのように、蓄積や反復の中から都度異なる解を取り出し、組み合わせを試すことで、予期しえなかった光景と出会うことができる。


2022.5.8 横山麻衣

​会場撮影:Naoto Kozuka

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