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太陽の影で / The Sun's Shadow

KATSUYA SUSUKI GALLERY

2025.5.10 - 5.25

2025.5.10 - 5.25

昨年の今頃はイタリアに滞在していた。
初夏に訪れたシチリアの太陽の激しさと、それによってもたらされる⻘⿊い陰影は、すべての遺跡の稜線をくっきりと浮かび上がらせていた。

⽩⾶びするほど太陽が降り注いでいるのに、⽯造りの建物に⼀歩⽴ち⼊ると肌寒く、そして驚くほど暗い。崩れた壁から差し込む陽光を反射して⽩くはげた彫刻がぼんやりと発光している。

初夏のイタリアでは、夜遅くまで陽が落ちない。
しかし暮れると家の照明は暗く、絵を描くには明るさが⾜りないので、夜半過ぎにはきっぱりと眠ることにしていた。

明かりの飽和した東京の昼も夜もない⽣活とはかけ離れて、光を頼りに正しく寝起きしていたと思う。

明かりがなければ何も⽴ち⾏かないこの世界で、教会の壁には地獄の炎がごうごうと燃えていた。この旅を経てわたしは光の⼆⾯性を感じ、この⼟地の太陽、炎、そして光について描かずにはいられなかった。


『黒い日差しと天を支える巨人』神殿跡に残る巨大な男性像(テラモン)。かつては神殿の屋根を担ぎ、シチリアの苛烈な太陽に向かって全身を曝け出していた。『保存されたエロス』愛の神は博物館に保管され、管理されたライトのもとで昼も夜もなく展示されている。『星が裏返るとき』「矢/←」という記号は、単なる矢そのものを表すにとどまらず、向かうべき先、力の移動、変化の軌跡、さらには時間の不可逆性といった、物理的・哲学的・感覚的な諸要素を内包する象徴でもある。『Botanical wax - Stapelia hirsuta #2』世界最古の科学博物館 La specola に保存されている、蝋で作られた植物模型。まるで本物のように精巧な植物模型は自然光の当たらないガラス棚の中で下から照らされ、数世紀もの間咲き続けていた。『青く照らされたマラヴォルタ』20世紀初頭の発掘調査の助手であったナターレ・マラヴォルタの名前にちなむ。『May 10 2024』2024年5月10日に発生した太陽フレアの影響でイタリアや日本などの低緯度の地域からもオーロラが観測された。『Sun-Scorched Plants』シチリアの熱波、灼熱の太陽。植物は乾いているが死んでいない。『急ぎ足の夜』初夏のイタリアの夜は短い。『夜をひた走る船』夜は短く、震えるほど肌寒くなる。『中庭の壺』ボーボリ庭園に面した中庭に今も置かれているだろう。『小さな地獄の炎』スクロヴェーニ礼拝堂に描かれた地獄。ヨーロッパの石造りの建築物の内部は驚くほど冷たく、光が届かない。灯火が無ければ過ごせない空間に、魂を焼き尽くす業火が描かれていることの奇妙さと、炎という存在の多面性を感じずにはいられなかった。『Vei』エトルリアではしばしば子宮(や内臓)を模した奉納品がVeiという古い神に奉納されたようだ。「Vei」は「力を生み出す」という意味を持ち、人間と自然の両方の生命の循環の再生を司る女神であったらしい。『A Fragment of Abduction』” 合意のある”誘拐。『海の息子』海の息子。『黄金/鉛の矢』大きな変化をもたらす矢。『Callistemon speciosus』ブラシノキ。Callistemonはギリシャ語で「美しい雄しべ」という意味。『Euphorbia candelabrum』candelabrum は燭台を意味する。『A sea-hued myth』オトラントの海の色。トリトンは海の色をしているという。

​会場撮影:Kenji Agata

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